ウィンドサーフィン基本


 

なぜウィンドサーフィンは走ることができるのか

揚力

セイルに風を受け、風の力を利用して走るのですが、セイルに流れる空気により「揚力」と

「抗力」が発生します。

揚力は、空気の流れる方向に対して垂直に働く力で、抗力は平行に働く力です。

ヨットは揚力を利用し、帆掛け船は抗力を利用します。

水の場合、外輪船(黒船)や手漕ぎボートは抗力、プロペラは揚力を利用し、揚力の方が

かなり効率的な力です。(揚力は抗力の10~20倍)

揚力は、セイルで風の流れを少し曲げることで力が出ますが、曲げすぎると力は急激に

弱まり失速します。

曲げる角度(迎え角)はセイルの形(カーブ)によって異なりますが、ほぼ12度~20度で、

それ以上曲げると急激に力が弱まります。

みかけの風

吹いている風(真の風)と、走ることで前からくる風(進行風)が合成された風の方向、強さ

になり、これを「みかけの風」とよび、これがセイルに入る風の方向、強さになります。

真の風と進行風のベクトル合成されたみかけの風は、真の風よりも前方からとなり、

真の風よりも強くなります。

真の風が強くなった場合、すぐには走る速さは変わらないので、みかけの風の向きは後方

に変化し、セイルをそのままにしておくと失速となりますので、みかけの風に合わせて角度

を変える必要があります。(セイルの角度を変えないと強い風は入りますが進まない)

みかけの風が強くなったので揚力も強くなり、速度も上がることから、みかけの風の方向

は前方に変わり、風の強さも強くなり、それに合わせたセイルは引き込んだ形になります。

真の風が弱くなった場合、進行風は変わらないので、みかけの風は前方に変わるため、

バランスを崩し、風上側に倒されてしまいます。

真の風は、方向が微妙に変わり、強さも変化します。ボードの向きも風下・風上側に変化

し、みかけの風(ベクトル合成)は常に変化します。

この、みかけの風を意識して練習すれば、少しは早く走れるようになるでしょう。

ただ、真の風はさざなみの動き等で認識でき、進行風はボードの速さで認識できますが、みかけの風を認識することは非常に難しいことです。

練習としては、セイルの引き込みの調整をし、風をつかむ・逃がす感覚を身につけることで、どこまで引き込めば早く走れるかを感じながら乗ることです。ただ、引き込みすぎると、セイルにパワーは感じますが、スピードは落ちます。風を逃がしても裏風が入らなければ前に進み、セイルを引き込んでいくとスピードが上がっていきます。




 ウィンドサーフィンの道具

 

 1ボード

   フィン

   ジョイントベース

   フットストラップ

   エアーバルブ

 

 2リグ

   セイル

   マスト

   ジョイントエクステンション

   ブーム

   アップホールライン

   ハーネスライン

 

 3その他

   ウエットスーツ

   ブーツ

   グローブ

   ハーネス

   ライフジャケット

   帽子

   サングラス

   GPS

 



 セイルとジョイントのアンダーシートの通し方(セイルと平行なプーリーの場合)

 シートを右の写真のように、下→下→上→上→下から通す。

 下の写真のようにきれいにシートが並ぶ。



セイリング


  ニュートラル・ポジション

セイルを風になびかせて、ボードにほとんどパワーを伝達しない構え

パワー・オフの状態

ボードの向きに関係なく、ジョイントを中心にセイルに対してV字バランスを取る。

ブームの下のマストをもち、ジョイントをはさんで立ち、バランスをとる。

風が強いときはアップホールラインの根元を持つとバランスを取りやすくなります。

 

ニュートラル・ポジションでの方向転換

ニュートラル・ポジションで、マストを右に傾けるとボードは左に回転し、左に傾けると右に回転します。足は常にジョイントを中心にセイルに対し立つようにします。

(セイルを傾けた逆方向に回転して行く)

 

スターティング・ステップ(5ステップ)

1後ろ足を後方に踏みかえる

2前足をジョイントの後方に踏みかえる

3マストを立てる

4ブーム手(後ろ側の手)でブームをつかむ

5マスト手(前の手)をマストからブームに持ち替える

これでセイリング・ポジションとなるので、徐々にセイルを引き込んでゆくと走り出します。 



セイリング・フォーム

 ボード上に立った位置のボード中心(側面抵抗の中心 CLR)の反対側にセイルのパワーを感じるようにバランスを取ります。

 風が弱いとき(パワーが少ないとき)は、マストはノーズ側へ、セイルは風下側へ倒すと、セイルの重さが増しバランスを取りやすくなります。

 風が強くなるにしたがって、セイルのパワーはセイルの中心(パワーポイント CE)に移っていきますので、マストは直立もしくは後傾させないとバランスは取れなくなります。

 さらに強くなると、ボードが浮きプレーニング状態になります。

 この状態では、側面抵抗の中心はボードの後ろ寄りとなりバランスを取るために体は後ろ寄りに、マスト・セイルは後傾していきます。

 セイルの引き込みが、弱いと風が逃げパワーが出ません。また、引き込みすぎると横流れのパワーが強くなり、前に進みません。適度な引き込みのときに最大のスピードが出ます。

 引き込みの感覚をつかむことが上達につながります。

 実際には、セイルはジョイントでボードと繋がっていますので 、セイルを引く方向は、少し前後にずれます。


ニュートラル・フォーム

 ジョイントを中心に、セイルと体でV字バランスを取る。

 バランスの取り方は、片手でブームの下をもち、足はジョイントを中心に肩幅くらいに開き、爪先はブームエンド側に向ける。

 片手でもつのは、マストでもブームでもアップホールラインでも、バランスの取りやすいところで良い。

 また、ブームエンドを上げ下げしてみると、セイルの重さが変わるので、バランスを取りやすいところを見つける。

 これでバランスが取れたら、マストをノーズ側(ボードはベアする)・テイル側(ボードはラフする)に傾け、ボードがどのように向きを変えるか確かめる。

 ニュートラル・ポジションからラフ・ベアして、ボードの向きを変えてみると、どの位置に体を置けばバランスが取れるか体感することができ、加えて、ボードをコントロールする感覚をつかむこときる。

 特に、クウォーターやランニングでのニュートラル・フォームは、かなり難しく、必ずと言っていいほど沈します。このニュートラル・フォームを覚えれば、セイリングの幅はかなり広がります。

 上級者は、いとも簡単に、このフォームを取っています。

 



各方向への走り方

クローズホールド

 クローズホールドとは風上から45°の角度で走ることで、風上に帆走できる限界の走り方です。

 風上45°より風上に向かうとスピードは急激に低下し、さらに風上に向かうと停止してしまいます。(デッドゾーン)

 クローズホールドの走り方を身につけるためには、デッドゾーンを見極めることが必要で、デッドゾーンからのベアを身につければセイリングの自由度が良くなります。

 

2アビーム

 風に対して真横に走ることで、帆走で最もスピードが出るアングルです。

 セイルは少し開き気味で、風の取り逃がし(オン・オフ)が難しく、ボードの横揺れも同調しやすいため、バランスを取りにくいことがあります。

 強風では、進行風が強くなり、風を逃がすと裏風が入りセイルは風上側に勢いよく倒れてしまいます。(ハエ叩き)しかし、進行風をつかみ、セイルを十分に引き込むことができれば最も早く走ることができます。(風速の2倍以上)

 

3クローズリーチ

 クローズホールドとアビームの間の角度で走ることで、ある程度の上りとスピードを得ることが可能なアングルです。

 風に対する高さも得られ、バランスが取りやすく、スピード調整もしやすく安定したセイリングに最適なアングルです。

 

4クォーター

 風下45°の角度で走るアングルです。風速によってスピードやセイルパワーの強さや風の方向が大きく変わるため、バランスを取りにくいセイリングアングルです。

 

5ランニング

 風下に走ることで、セイルに風を流すのではなく、風を溜めて走る最も原始的な帆走方法です。

 セイルに入る風のパワーは強いのですが、風速以上のスピードは不可能な走り方で、スピードが上がると同時にパワーは弱くなってしまいます。

 マストを右に傾ければ、ボードは左に、マストを左に傾ければ、ボードは右に曲がっていきます。



 ラフとベア 

 直進でバランスを取っている状態から、セイルを前倒しするとCEは前にずれるので、ボードは風下方向に回転(ベア)し、後倒しすると、ボードは風上方向に回転(ラフ)する。また、マストを風上に倒すとジョイントがマストで風下に押されベアし、風下に倒すとジョイントがマストで風上に押されラフする。 

 また、ボード上の両足により、前足でボードを押せばベアし、後足でボードを押せばラフする。 

 ラフとベアはセイルの傾け方と足の踏込み方のバランスをとることで行える。 

  風が強くなると、セイルにかかるパワーが増えるので、少しのセイル操作で方向は変わる。また、バランスを取るために両足にかかる力も増え、少しの操作で方向は変わるが、スピードの変化で、CLRの位置が変化するのに対応するため足でボードを押すと不安定(ラフし過ぎで沈・ベアし過ぎで前に飛ばされる)になる。

 風の強いときは、両足で体を安定させ、セイルの傾け方でラフベアさせるのが楽に走るコツです。

 もちろん、CEはブームより上部にあるので、セイルはブームを下方向に押さえ付けることにより安定します。



 ウィンドサーフィンのマナーとルール

 

1 マナー

 海の波や風、潮の満ち引きや潮流は自然の変化で、人の都合に合わせてはくれない。

  この自然に対する畏敬の念を持つことが大切です。

  マナーとは、礼儀とか良識というようなもので、他の人に迷惑をかけないように、みんなで楽しくやりましょう。という理性的な行動を実現するためのもので、長い年月をかけて作られてきた常識といえるものと思われます。

 海の公園では、公園内を散歩する人、砂浜で遊ぶ人、潮干狩りをする人、夏には海水浴をする人、SUPをする人、ウィンドサーフィンをする人等、多くの人が楽しんでいます。自分で自由に楽しむためには、周りで楽しんでいる人の自由を侵害するような迷惑行動はとらないようにすることが重要です。

2 ルール

 ルールとはマナーを知らない人に対する決め事にほかなりません。

 海のルールは弱者優先で決められています。

 人(海水浴)>手漕ぎボート(サーフィン)>ヨット(ウィンドサーフィン)>動力船・小型船(モーターボート・漁船)>中型船>大型船

①弱者優先

②右側優先(スターボード優先)出会いがしらでは右側によける。

③風下優先、風上のほうが相手を確認しやすいと同時に風も取りやすい状況で、風下が弱者となる。

④被追い越し艇優先(追い越し注意)、追い越すほうは確認しやすく方向転換もしやすい、追い越されるほうは自由が利かないため。

 ヨットレースの場合優先順位は スターボード > 風下艇 > 被追い越し艇 の順となり、接触等があった場合はペナルティとして失格となる。レースでは自艇を優位にするためルールに従って攻撃することもあります。

 

3 マナーとルール

 

 レースと違いセイリングを楽しむためには、ルールを守れば自由(なにをしても良い)と考えると、権利のあるほうが故意に邪魔をする(スターボードなので避けない、風下から上ってくる、後ろから走ってくる艇を邪魔する等)ことで、事故の原因にもなり、争いの元ともなるので、良いマナーを心がけ、楽しくセイリングすることが肝心です。